20年以上前の話だ。埼玉県の救急病院で週に1回当直業務をしていた。夜間に具合が悪いと受診してくるのだ。
「昼間に病院受診して、きちんと診断、治療を受けてください。」
こう言うと次のような返事が返ってくる。
「休みが日曜日しかないので、平日や土曜日は受診できません。」
週休二日制の仕事が増えてきたが、この地域では休みが日曜日だけが当たり前だった。受診したくても仕事を休まないと受診できないのだ。小さな企業では休みが日曜日だけというのが当たり前だった。
特に、耳鼻科で日曜日に開いているところはほとんどない。どこも開いていないので、夜間に来るしかないのが、患者の本音である。その患者が悪いわけでもない。ましてや耳鼻科の病気であれば、その受診を目的に休むことは認められない。
開業時に、耳鼻咽喉科の日曜診療をしようと考えた。開業してから二十数年日曜診療をやっていたが、徐々に患者数も減ってきたので、うちきることにしたのだ。
田舎のほうにいけば、耳鼻科の診察終了は早い。しかも、開いている日も少ない。それでも患者が来るのは、来られる患者しか診ていないからだろう。受診できない患者はずっと受診してこないままなのだ。
母親とその子どもだけを診察していればなんとかなった。父親は仕事。母親は専業主婦。子どもは母親が病院に連れて行く。母親と子どもと、働いていない祖父母をみれば耳鼻咽喉科開業医はなんとかなったのだ。来ない人は見捨てる。
なんかおかしいなと思いながら日曜診療を続けていた。しかし、今は両親共働きが多くなり、子どもも含めて来なくなってきている。来たくないのではなく、受診できる時間帯に開いていないわけだ。
せっかく仕事を休んできてくれたのだから、できるだけ早く診療を終わりにする。できるだけ受診しないでいいようにもっていく。それでもきちんと治療をしていく。それを心がけている。